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§?) 余談





ベスパPK50XL



 なんというのか、ベスパマニアの方々から見れば、きっと怪しからんオウナーに違いない。

 なにしろ、ほとんど棚ぼた式に突然、ベスパに乗ることが出来るようになった幸運なのであって、それはMGBのように明るいワケではなく、手元に来てから慌てて素性を調べ始めたような次第なのである。

 あまつさえ...いや、白状するなら、工具を持つようになって間もなかった昔、実は一台のベスパを壊してしまっているのだ。

 やはり譲り受けたイタリアのスクーターを、まだしっかり動くというのに、「レストレイションをする」などと宣い分解した。エンジンからピストンを取り出し、したり顔で作業をしていたは良いけれど、ピストンリングの天地を誤って挿入し、あっけなくそれは折れてしまったという、実にトホホな経験なのである。

 トラウマとも言うべきイタリアのPIAGGIO製スクーターは、しかし、時代を超えて洗練されていた。

 まずもって、2ストロークエンジンを動かす燃料は、それまでの混合燃料から普通のガソリンとなり、グリップを回転させてギアシフトを行う独特の変速システムは、コグドベルトによる可変プーリー方式へと進化し(現代でいうCVTだ)、左のグリップは、自動クラッチの作動を制御するスイッチワイヤーを操作する。

 しかして、エンジンを始動させ、出発する際に、左のグリップを「クイ」と捻ると、自動クラッチが接続して「ぴょこん」とお尻を震わせるので、なんといってもこれが可愛らしい。スロットルを開けると、それは逞しく白煙を吐いて走り出そうとするのだけれど、これまた大時代的なスロースタートで、ほとんど朗らかな気分になる。

 なにしろ昨今の日本製スクーターのエンジンといったら、もはや暴力的に加速していくので、うっかり交差点でその気になると、本当に危ない。

 ところで、PK50XLは「エレスタート」という装備をもっている。車体に記されたそのエレガントな響きの名前から、さも美しく素晴らしい仕掛けだろうと思いきや、まあ、エレクトリック・スターターを指すのであって、要するにセル付きということだ(尤も、現在は壊れていて使えないのだが)。

 かくて、鉄製の重たい車体を被せられたPIAGGIOの2ストロークエンジンは、日本の世知辛いクルマ社会の中で、肩身の狭い思いをしながらトコトコと走っている。サイドカバーの中に納められたスペアタイアが、なるほど、田舎道でパンクしても挫けずに働くしたたかさを感じさせるではないか、ふむふむ。



* ベスパPK50XL *







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